かねきで「オムライス」
長野市の東隣、須坂市中心部に来るたびに気になっていたこの昭和感溢れる建物。
最初は廃墟かと思ったが、どうやらポツポツと営業してる店はあるらしい。
一角に明かりを灯しているレストランがある。今日訪問したのはここ「かねき」。評判を聞いてやってきた。
これも懐かしいショーケース。オムライスが人気らしい。30センチはあろうかというビッグサイズである。このサイズでこの価格は安い。期待が高まる。お昼ちょうどくらいに入店したが、既に満席でしばし待つこととなる。今主流の、紙に自分の名前と人数を書いて順に店員に案内されるシステムではなく、自分で自分の後に来た客を覚えておくという責任重大なシステムである。僕の前に待っていたのは1人だが、僕の後に続々と客がやってくる。順番を間違えまいと緊張する。
「次のお客様〜」と店員に声をかけられ、左右をキョロキョロ見回し、周囲の客と「僕で間違いないよね」と無言のコンタクトを交わし席に突撃する。案内されたのは僕一人なのに四人がけのテーブルである。個人的には相席でも良かったのだが、ちょっと肩身が狭い。
とりあえず一番ベーシックな「オムライス」を注文する。各メニューには「ミニサイズ」があり、こちらの方がファミレス等の通常サイズに該当するようだ。
10分ほどでオムライスが到着。
奇をてらわない、極めて正統なビジュアルの、ピカピカと輝く美しいオムライスである。ウィンドウの見本に偽りはなく、30センチは確実にある。
割ってみるとこれまた正統なケチャップライスが顔を出す。お米一合分はゆうにあるだろう。卵は一見堅焼きのようだが、内部はレアな焼き上がりとなっている。。
ケチャップライスに入っているピーマンが見た目にも味にも良いアクセントになっている。黄色・赤・緑の組み合わせが実に美しい。内部がレアな玉子がケチャップライスにまとわって渾然一体となり、四人がけテーブルのぼっち客のおじさんは美味しさにひとり悶絶するのであった。
オムライスの美味しさというのは、大人になってからわかるようになった複雑な旨味とは違い、子供の時から持ち合わせているもっとシンプルな味覚センサーが敏感に反応する。そして不思議なことにこの類のものを食べようとする瞬間、顎の付け根のあたりが「ツーン」とする(←わかってもらえるかな?)。
添えられていたキャベツの千切りにかかっていたドレッシングも一見出来合いの赤ドレッシングだが、実は手作りですりおろした玉ねぎの辛味が効いていて程よいアクセントとなっている。
ウェイトレスのお姉さんが厨房に注文を伝える時「オムライス玉子固めで〜」と言っているのが聞こえてしまった。そのようなオーダーもできるのか。
次は味噌オムライス卵固めを食べてみたいと思いながら、店を後にしたのだった。
追伸 しかしこの「須坂ショッピングセンター」のカオス感は半端ない。通常であればここまで寂れれば閉鎖してしまうように思うが、意地のように営業している店が点在している。
奥の方から豚ガラを炊く匂いが漂ってきた。なかなか人気のラーメン屋があるようだ。次回はそちらにも行ってみたい。