【長野市】海沼ドライブインで「肉増しジン定」
ジンギスカン街道の入口のドライブインでダムの放流を見ながら食べる絶品ジンギスカン
長野市から松本へ抜ける国道19号線沿いには、「ジンギスカン」ののぼりや看板を掲げた店が数多く立ち並ぶ。
札幌育ちの僕は、長野へ引っ越してきた当時は「なぜ長野でジンギスカンなのか!?」と衝撃を受けたが、歴史を紐解いてみるとルート上の信州新町を中心に、昭和初期は羊の飼育が盛んであったのだという。札幌育ちの僕はちとジンギスカンにはうるさいのである。長野のジンギスカンとやらはいかなるものであろうか。
というわけでやってきたのがジンギスカン街道の最も長野寄りのこの店。
目の前には東京電力の小田切ダムがあり、自然の岩盤を生かしたその形と、放水の轟音は大迫力である。
ここは旅館もかねており、かつては多くの客で賑わったのであろう。かなり大きな箱である。
土曜日の12時5分ほど前、店に入ると客としては自分が一番乗りであったが、窓際のソファ席で寝転んでいた小学生の兄妹が飛び起きた。テーブルの上には教科書やノートが並んでいる。どうやら客席の一部は彼らの生活空間となっているようである。
四人がけのテーブルが10卓、小上がりの座卓が3卓、子供達の生活空間となっているソファが3卓とかなりの収容能力である。ダムが一望できるテーブル席に座る。歴史を感じる店内だが、掃除が行き届いており床もテーブルもピカピカだ。
子供たちの母親と思わしき女性がメニューを持って来てくれた。愛想は控えめであるが美人である。肉増しジン亭(¥1050)を注文。要するに肉大盛りのジンギスカン定食である。注文したらメニューを持って行かれてしまったので写真を撮り損ねた。他のメニューは通常サイズのジンギスカン定食が¥850、とんかつ定食が¥730、カツ丼が¥630、ラーメンが¥420とかなり安価である。
ジンギスカン定食はテーブルで自分で焼くことも出来るし、厨房で焼いてくれることもできるという。服を汚したくなかったので焼いてもらうことにした。店が広い分、厨房も遠いせいもあるが、肉を焼くジューという音が聞こえず、シンとしている。果たしてジンギスカンをちゃんと焼いてくれているのか若干心配になる。
しかし5分ほどで無事到着。湯気が上がっているのでちゃんと焼いてくれたのは間違いない。小鉢類が充実した定食だ。
ジンギスカンは何やらおろし状のタレをたっぷり纏っている。
タレがまとわりついたマトンを、さらに小皿のタレにつけて頂く。
この独特のおろしタレがポイントだ。おろしたタマネギ、リンゴ、ショウガ、少量のニンニク、ゴマが入っている。マトンの臭みを程よく消してくれる。もっとも僕は羊肉の匂いは好きなのでもっと匂っても全然大丈夫であるが。
マトンはさすがに「やわらか〜い」とはいかないが、一口大にカットされているのでそれほど噛むのに難儀はしない。しかし食べ進めるにつれ、流石に顎が疲れてくる。タレが美味くてご飯がすすむ。ご飯も大盛りにしておけば良かった。
しばらくして、僕の後ろに2人連れの老人の男性客がやって来た。ダムを見ながら、水が綺麗だね〜とかあの鳥はなんだい、サギかな、などと他愛のない話をしている。でもその他愛のなさ加減が良かった。僕は他愛のない話、というのが苦手なのである。話し相手につまらない奴だと思われるのが怖くて、いろいろ気を遣って話して疲れてしまう。そうか、こうやって目に入ったことを気取らずに自然に話せば良いのか。実に勉強になった。
会計をしようと厨房を除いたら、初老の夫婦が厨房を切り盛りしている様子であった。子供達の母親の両親であろう。こちらは愛想良く挨拶してくれた。
晩秋のダム。古びたドライブイン。老人の他愛のない会話。そこで食べる絶品のタレを纏ったジンギスカン。すっかり満足して店を後にした。