駅前食堂で「ぽっぽや定食」
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上田市街から菅平高原方面に北上する国道144号線を走っていると、突如「駅前食堂」という看板が現れる。しかし、付近に駅はおろか、線路らしきものも見当たらない。
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ここは今から50年近く前に廃線になった「上田交通真田線」の「北本原駅」跡なのである。
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50年近く前には、上田駅を起点に複数の路線が放射状に伸びていた。例によって自動車の発達でほとんどが廃線となったが、今でも別所温泉に通じる「別所線」だけが現役で営業を続けている。しかし昨年の台風14号による千曲川の洪水により鉄橋が崩落し、現在でもその区間は不通となっている。現在復旧工事が進んでおり、来年には再び全線で開業する予定である。
話を戻すが、この駅前食堂、真田線が現役の頃から営業しており、店の内外とも当時音雰囲気をそのまま残している。
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真田線の現役当時は上田の街に出る前にさっと昼食を済ませてから電車に乗る人、あるいは上田の会社からの帰り、電車を降りてちょっと一杯、などというサラリーマンに愛されてきた店なのであろう。
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店内には当時の写真が沢山貼られている。
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価格自体は当然当時から上がって入るだろうが、手頃さという点では当時のままであろう。「ぽっぽや定食(¥1020)」をオーダー。かつて地元のテレビ局が取材に来たときに、リポーターが命名したスペシャルメニューとのこと。
オーダーを済ませると、店内に「上田交通の歴史」という本があったのでゆっくり読もうと思ってページを開いた矢先に早くも定食が到着した。
時間にして2分ほど。早い。
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「ザ・昭和のラーメン」といったビジュアル。脂がほとんど浮いていない。
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麺はウェーブのかかった細麺。スープは鶏ガラの極めてシンプルな味わいだ。厚めのロースチャーシューが美味い。
言ってみれば何の変哲もないごくごく普通のラーメンだ。しかし、この味で長年愛されてきたのだ。下手にいじらず、当時の味を守ってくれていることに敬意を表したい。
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もつ煮は味噌味で極めて柔らかく煮込まれており、若干ニンニクが効いているのがポイントだ。これはご飯に合う。
店内は古いが掃除が行き届いており実に清々しい。店の女将さんは白い割烹着に三角巾をきりりとかぶり、来る客を「いらっしゃい」と迎える。その姿と言い、「いらっしゃい」のイントネーションといい、何だか昭和40年代を舞台にした山田洋次の映画の中に自分がいるみたいな錯覚を覚える。
線路は無くなり、周りの風景も当時とは変わったであろうが、この駅前食堂だけは味も価格の手頃さも変わらないのであろう。ゆえに世代を超えて愛されるのであろう。
末長く頑張って欲しい。また必ず来ます。