えど家で「カツカレー」

長野に来てもうすぐ2年、市内の安くて美味いという評判の店はそれなりに食べ歩いてきたつもりであった。

しかし身近にこんな店があることはつい最近まで知らなかった。店の前の道はしょっちゅう通っているのだが、全く認識出来ずにいたのである。

何せ間口は二間ほどの極めて小さな店である。見落としてしまっても無理はない。

しかし長野の安くて美味い店のリサーチをする中でこの店を見つけてしまったのである。

そこで早速訪問しようと思ったが、なかなか入ることが出来ない。店の前に4台ほどの駐車場は平日週末にかかわらず昼時は常に満車なのである。

今日こそは何としても入店しようと、11時半前に行ったのだが既に駐車場はいっぱいで、さらに一台が待っている状況であった。

しかし今日は諦めない。しばらく時間を潰して再び赴いたところ、タイミング良くちょうど一台出るところであった。

喜び勇んで店内に突入すると、カウンターだけの狭い店内にはすでに一人の先客が立って待っているのであった。

急に季節が戻ったような、雪混じりの雨が降る寒い日であったが、外で待つ。

すると白い軽自動車が厨房のドア前のスペースに入って来て、降りて来た主人らしい男性が「寒いから中で待っているといいよ」と声をかけてくれた。

お言葉に甘えて店内の7席のカウンターの後ろに立って待つ。

幸い回転が良く、5分も待たずに着席することが出来た。隣の客とは方が触れ合うほどの近さで、まさに濃厚接触である。

メニューの一番最初が「ラーメン¥350」である。それでチャーシューメン¥490、餃子定食¥450である。間違いではない。一番高いメニューが¥650である。この令和時代に信じられますか!?

とりあえず初回なのでカツカレー(¥600)で様子を見ることにした。

厨房の中ではおかみさんがひとりで顔を真っ赤にして中華鍋を振ったりトンカツを揚げたりお会計から電話まで対応してものすごく忙しそうに動いている。

出来上がった料理はカウンターの客に提供されるだけではなく、主人がさっきの軽自動車に積み込んで飛び出していく。出前もやっているのである。

それにしてもこの主人、声が大きい。おかみさんとのやりとりもまるで怒鳴っているようで最初は驚いたが、別に怒っているわけではないらしくおかみさんは至って平気な顔で鍋を振っている。

僕より先にカツカレー大盛りを頼んだ2つ隣の客に注文品が到着した。

デカイ。

ご飯は丼をひっくり返したくらいの量がある。大盛りにしなくて本当に良かった。

10分くらいで「おまちどお」の声とともに僕のカツカレーが到着。

画像だけではサイズ感が伝わりづらいと思うが、皿の直径は30センチくらいあり、トンカツも20センチくらいはある。肉は薄めであるが、ロースで100Gくらいはあると思う。

カツカレーの到着と主に、目の前にソースのボトルがドンと置かれた。どうやらこのソースをお好みでかけて食べるというスタイルらしい。

カツにはカレーがかかっていないため、最初はカツにソースをかけて、カレーのかかっていない部分のご飯でカツライスとして楽しむことができる。中盤からカレーを絡めて味の変化を楽しむことが出来る。たっぷり目のキャベツ・レタスが添えられており、途中でこれらで口をさっぱりさせることでこのボリュームであっても飽きることがない。

カツは冷凍の既製品ではなく、手作りなのが嬉しい。注文の度に一枚ずつ揚げており、カリカリとした食感がカレーに合う。カツカレーのカレーは分厚いジューシーなカツよりも、薄めでカリカリの方が合う。

カレーはごく普通の既製品のルーであるが、ソースで自分好みに調整できる余地があるのがニクい。

特筆すべきは店の清潔さだ。かなり年季の入った建物ではあるが、カウンターは綺麗に磨かれ、厨房内のステンレスもなかなか手の届かないようなダクト部分も含め、どこにも脂汚れがたまっている様なところはなく、鈍く輝いている。

またワンオペで息つく間もなく動き回っているおかみさんも、決して殺伐としたところを見せることなく、帰る客に「お待たせしてごめんね、ありがとう」と声をかけている。本当に大したものだ。

これだけのボリューム・品質でこの価格でやっていけるのかと心配になるが、恐らく2階が自宅で、家賃もなく夫婦二人ゆえ人件費もかからないからやっていけるのであろう。儲けてやろうという下心が全く見えない。これだけ忙しくても優しく接客してくれるおかみさんにはもう少し儲けさせてあげたい気持ちになるが。

この良店が末長く続いてくれることを祈りつつ、全メニュー制覇を誓って店を後にしたのだった。

にほんブログ村 にほんブログ村へ
にほんブログ村

Tanoyatsu

単身赴任で長野に来て4年目の40代半ば男子。休日の趣味は水泳、ジョギング。ハラペコを満たしてくれる安くて美味くて大盛りの店を探すのが楽しみ。