レストラン志津香で「ドライカレーカツ」
上田駅近くの国道18号線沿い、以前通りかかった時に道路から見える看板が気になっていたこのレストラン。
レストラン志津香にやってきた。
ここ2週間程、上田近郊でコロナウィルスの感染者が増えているせいだろうか。事前のリサーチでは混雑必至の人気店と聞いていたが、土曜日お昼過ぎの店内には先客が2人だけであった。
「いらっしゃい」と笑顔で迎えてくれたのは女将さんだ。美人である。
店内は年季の入ったいかにも昭和の洋食店といった感じであるが、掃除が行き届いており清潔である。
午前中10kmのジョギングを終えてからきたので腹はペコペコ、そんな僕の目に留まったのが「ドライカレーカツ」、要するにドライカレーの上にとんかつが乗ったのに目が釘付けになり、予算オーバーであったがこれを注文。
「ドライカレーの辛さはどうしますか?」と尋ねられ、一瞬迷ったが今回は中辛とした。
女将が「ドライカレーカツ、中辛で」と奥に声をかける。
二人連れの先客も帰ってしまい、お昼時だというのに客は僕1人になってしまった。
8分ほどで到着。
これは腹ペコにはたまらないビジュアルだ。付け合わせの野菜の盛り付け方が懐かしくも美しい。写真を撮り忘れたがこの他に味噌汁が付く。
更に厨房からご主人がサッとこんな皿を出してくれた。
「こっちはドライカレー辛口、味見してみて」
さっき注文の時、ドライカレーの中辛か辛口か一瞬迷っていたのを厨房で聞いていたのだろうか、何と茶碗半分ほどの辛口ドライカレーをサービスで出してくれた。
いかにも洋食屋の、とんかつではなく「カツレツ」である。肉は薄く伸ばされ、細かいパン粉がこんがりと揚げ焼きされている。
スパイシーなドライカレーにサクッとした食感のカツレツ、それらをデミグラスソースが取り持って渾然一体となり、たまらない美味さである。
これは長崎のトルコライス、根室のエスカロップにも通じる大人のお子様ランチだ。
女将さんはカウンターの向こう側に座り、「コロナが収まらなくて大変ですよね」という話題から始まり、そこからおしゃべりが止まらない。
この店は開店から51年になること、主人は銀座のレストランで修行したこと、自転車が趣味でよく善光寺まで自転車で行ったこと、息子は43歳であること、もう70歳を過ぎて体がキツくなってきたが常連には80までやって欲しいと言われていること、昔は隣に千曲バスの車庫があってバスガイドの寮があったこと、近くには銀行とか保険会社が多く客層に恵まれたこと、今は借金もないし夫婦2人でやっているからこんな状況でも何とかやっていけること、など初回訪問の客にもかかわらず休む間もなく喋り続け、僕は否応なしにこの店の歴史を学んだのであった。
不思議なのはこれだけおしゃべりな女将なのに、下品な感じが一切しないということだ。これは女将の人柄と、やはり近隣に大企業が多く客層が良かったということであろう。
辛口のドライカレーも有り難く頂いた。辛いのは大好きであるが、これはなかなか辛口である。
一見さんなのに、何だか何十年もの常連のように迎えてくれた。
ああ美味しかったし楽しかった。この名店が一日も永く続くことを切に願う。