【長野市】ぽんぽこでかつ丼
実家の様な温かみのある店内で食べる個性的なかつ丼
4月初旬の土曜日。今年は春の訪れが遅めであったが、今日は桜も一気に開花しそうなポカポカ陽気である。
そんな中やって来たのは、篠ノ井にある「ぽんぽこ」。そろそろ長野市内のノスタルジック食堂は行き尽くした感もあるが、最近見つけた店だ。駐車場は店の西側にあることはあるが、奥行きが狭く道路の縁石の切れ目も極めて小さく入りづらい。
土曜日のお昼ちょうどの入店で、僕が最初の客のようだ。カウンターに5席、小上がりに小さな座卓が二つのこじんまりとした店である。店内は清潔に保たれており、座布団カバー、暖簾などのチョイス、手書きのメニュー短冊に暖かみを感じる。実家に帰って来た様な安心感がある。
厨房から出て来た小柄なお母さんはにこやかに接客してくれた。初回訪問の今日はまず看板メニューの「かつ丼(¥850)」を注文してみた。
厨房からはトンカツをあげる「チリチリ」という小気味良い音が聞こえてくる。
程なくして「おまちどうさま」と運ばれて来た。
単なるかつ丼、というには申し訳ない様な、なんだか「かつ丼セット」とでも呼びたくなる充実ぶりである。
普通のかつ丼は、トンカツの下に玉ねぎを敷いてトンカツの存在感を最大限主張するものだが、ここはカツの上に玉ねぎを配置してトンカツの姿を隠している。なぜだろう、もしやトンカツが小さいのを玉ねぎで隠しているのではあるまいか。と疑ってひと切れのトンカツを箸で持ち上げてみる。
すると思いがけずずっしりとした、厚みがあるトンカツが姿を現した。噛み締めてみると肉はとても柔らかく、火の通し加減も絶妙だ。甘塩っぱい家庭的な味付けで、ご飯との相性も良好である。これは美味い。トンカツのサイズは十分大きく、トンカツが小さいのを隠す為に玉ねぎを上に乗せたのでは、などと疑った自分が恥ずかしくなる。カツ煮とご飯の間には海苔が敷かれていたりと、なかなか個性的なかつ丼である。
添えられた小鉢のおかずはイカと里芋の煮物、白菜の粒マスタード和え(これは珍しい)、タクアン、シソの実の醤油漬け。いずれも手作りで、お母さん料理好きなんだろうなあというのが伝わってくる。
ボリューム十分でお腹一杯、お母さんの温かい心遣いが伝わって来て心も満たされた。とても良い店だった。お母さんに「美味しかった」と再訪を誓いつつ、狭い駐車場から苦労して車を出して店を後にした。