あさひや食堂で「馬肉丼」
長野市中心部から犀(さい)川沿いの国道19号線を走ること30分強、街道沿いに現れる集落が信州新町である。
2010年までは「長野県上水内郡信州新町」という自治体であったのだが、長野市と合併し、現在は「長野市信州新町」という地名となっている。
決して大きな集落ではないが、化石博物館や美術館があったり、犀川のダム湖には遊覧船や屋形船が運行されていたりとなかなか魅力的な場所である。
長野市内から信州新町にかけての国道19号線沿いには昔からジンギスカンを出す店が多く、「ジンギスカン街道」として売り出しているのだが、街の中心地に店を構える「あさひ屋」では馬肉料理が評判なんだとか。
お昼ちょうどに伺ったのだが「支度中」の看板。あれ、臨時休業かなと思ったがちゃんと営業していた。ホール係のお兄ちゃん(息子かな)に言ってあげればよかったかな。
おすすめの「馬肉丼」(¥850)を注文。
10分ほどで到着。丼に蓋がしてある正統派の丼である。蓋付の丼の蓋を開けるときはいつも少し畏まった心持ちになる。「では、開けさせていただきます」。
ご開帳〜。
濃い褐色に煮込まれた細切れの馬肉と一切れのコンニャクが玉ねぎ・長ネギとともにご飯に乗せられている。
しかし、馬肉を食べると意識すると若干の罪悪感を感じるのは何故だろう。
鶏肉や豚肉は食べ慣れ過ぎてしまったのであろう。生きるということは他の生き物の命を頂いているのだということを改めて思い出した、少々重い気分で馬肉を口に運ぶ。
しかし食べ始めると美味である。濃いめの甘辛味で煮込まれた馬肉は嫌な臭みなどはないが、若干のクセがある。「クセがない」というのが最近のグルメレポーターの常套句の褒め言葉のようになっているが、馬を喰らっているのだ。馬のクセがなくてどうする。
サッと炒められた玉ねぎと長ネギが馬肉の煮込みと合わせられている点だポイントだ。炒め玉ねぎのシャキッとした歯応えと甘みが濃い味で煮込まれた馬肉をちょうど良い具合に中和し、丼にした時にちょうど良い塩梅になるという具合である。
付け合わせのワラビのお浸しと、いまが旬のネマガリタケの味噌汁がとても美味しかった。
帰り際、店のおかみさんに「この辺りでは昔から馬は食べられてきたのか」と尋ねてみたところ、このあたり食べられてきたのはもっぱら羊で、馬を食べる文化はなかったのだという。創業者が何か店の目玉商品を作ろうと、県南の飯田あたりでポピュラーであった馬肉の煮込みを提供しようと考えたらしい。
そして最近この店の名物がメガ盛りのカツカレーなんだそうな。
伝統を大事にしつつ、それだけに縛られることなく新たなことにチャレンジするのが長年にわたって人気店である秘訣なのだろうと感じさせられた。
次回はカツカレーにチャレンジである。