ふたばやで「ラーメンライス」
長野市の西隣、須坂市。これといった有名な観光地もない地味な街であるが、古い蔵が立ち並ぶ街並み、レトロな食堂が並ぶ臥竜公園、そして僕が勝手に「須坂の軍艦島」と名付ける「パルム」という廃墟寸前ではあるがちゃんと現役のショッピングモールがある。僕のような物好きにとってはなかなか魅力的な街である。
そんな須坂で午前中の用事を済ませ、帰り道の途中でお昼になった。この辺りで良さげな食堂はあったかなと考えた時、パッと思い浮かんだのが、以前たまたま通りかかって強烈に印象に残っているこの店、
「ふたばや」である。このフォント、ふたばやの「ふ」の点が欠けているところも最高ではないか。
年季の入った懐かしさを感じる店内ではあるが、掃除が行き届いており明るく清々しい。ご夫婦の経営のようで、エプロンに三角巾をキリリと巻いた奥さんが接客担当である。お昼ちょっと過ぎの訪問であるが、先客は誰もいない。
一番高い食事メニューでも¥1,000未満というのが嬉しいではないか。奥さんに「ラーメン・ライス（¥600）」を注文。
5分ほどで到着。丼の影に隠れてしまっているが、小皿にはキュウリの糠漬けと粕漬けが2切れづつ。芸が細かい。
極めて正統派の中華そばである。脂気のほとんどないスープを一口啜ると、鶏ガラのあっさりした、それでいて染み入るような美味さ。麺は中太の黄色い縮れ麺。しっかりした嚙みごたえのモモチャーシューがこのラーメンには相応しい。細くて歯応えの強めのメンマがまたいい。こういうラーメンは最近の一口目でガツンと美味い最近のラーメンに慣れている人にはもの足りないかもしれないが、決して飽きることがない。
ご飯の相手としては流石に上品すぎるラーメンであるが、それを助けてくれるのが手作りの切り干し大根の煮物とキュウリの漬物である。煮物にはさつま揚げとちくわも入っていて、ボリューム感がある。煮物と漬物でご飯を食べていると、思わず亡くなったばあちゃんを思い出してしまう。
いやしみじみ美味かった。これで¥600だから大満足である。しかし、この良店もこのご夫婦が引退したら終わりなのかもしれない。1日も長い活躍を祈り、店を後にした。
