おおしもで「ソースカツ丼」
長野に来て3年目だが、長野県内で一番好きなところはどこか、と聞かれたら迷わず「白馬!」と答える。
正確には白馬と、そこから南に10kmほど下ったところにある「仁科三湖」と呼ばれる、「青木湖」「中綱湖」「木崎湖」という三つの湖が連なっているのだが、そこにかけての一帯が好きなのである。
週末になるとよくドライブに来る。
しかし白馬で飯を食べたことがない。どこか安くて美味い地元客向けの店はないかと探してやって来たのが、
白馬駅近くの人気店、「おおしも」。
白馬はスキーシーズンになると日本人より外国人の方が多い地域で、この店も外国人客で賑わうそうだが、今年は全く外国人の姿が見えない。
しかし、30人も入れば満席の店内は既に日本人客で一杯であった。ウィルス対策でその気になれば3人は座れそうなカウンターにひとりで座る。
観光地としては極めて良心的な価格である。カツカレーや生姜焼き定食のボリュームが評判らしいが、今日は猛暑でジョギングが出来ていない。大盛り解禁は運動した後と決めている。それで今日は控えめに「ソースカツ丼」(税込¥700)をオーダー。
注文を取りに来たお姉さんはなかなか可愛いのだが、愛想がないのがちょっと残念だ。愛想があれば良い看板娘になれると思うんだけど。
10分ほどでソースカツ丼が到着。
食欲をそそる配色だ。存在感のあるソースカツ丼の茶色に、鮮やかな胡瓜の緑とプチトマトの赤が効いている。決してデカ盛りではないが、¥700でこれだけあれば十分である。カツの香ばしい香りとソースの甘酸っぱい香りが混じり合って立ち上ってくる。
カツは手作りのロースで面積は丼にちょうど収まる大きさであるが、厚みがあるため見た目よりボリュームがある。160Gはあると思う。脂身は丁寧に取り除かれている。僕は脂身大好きだから付いてた方が嬉しいんだけど。
パリッと堅めに揚げられた薄衣のカツが、甘酸っぱくスパイシーなソースを纏って、キャベツとご飯の上に鎮座している。しかしここのカツは衣が肉から剥がれやすい。箸で一切れ持ち上げただけでも何分の一かの衣はキャベツの上に置いてけぼりとなってしまう。ま、肉をかじってから、剥がれ落ちた衣とキャベツをご飯に乗せてかき込めは同じことである。
ソースカツ丼をまだ食べたことのない方は、とんかつ屋のとんかつにとんかつソースをかけたものがご飯の上に乗っかっている、そのようなものを想像するのかもしれない。
しかし少なくとも長野で親しまれているソースカツ丼は、そのようなものとは全く別物である。
まずとんかつが違う。脂身は綺麗に取り除かれ、衣は細かく、薄く、パリッと揚げられている。従ってソースの水分やご飯の湯気で衣がフニャフニャになることはない。最後までパリッとしている。ソースはウスターソースに近いが、もう少しフルーティで甘口だ。
これらのおかげで結構さっぱりと食べられる。普通の卵でとじたカツ丼よりもあっさりしている。これはこれで美味しい丼だ。
糠漬けの胡瓜がシャキッと爽やかな口直しになってくれる。
腹は満足、アルプスからの爽やかな風に吹かれながら、娘さんが愛想良い看板娘に育ってくれることを期待しつつ、白馬を後にしたのであった。