王龍で「餃子セット」
長野市中心部から15km程南下した千曲市・姨捨山の麓に、武水分神社という大変立派で広大な神社がある。
かつては多くの観光客が訪れる場所であったのだろう。今はもう廃業した旅館やみやげ屋だった建物が並んでおり、かつての賑わいを物語っている。
それらに混ざって今でも頑張って営業している旅館や寿司屋、割烹料理屋もある。
今日お邪魔したのはその並びの中華料理屋、「王龍(わんりゅう)」。
日曜日に営業していることを確認して、12時半頃に到着したのだが、暖簾はかかっていないし、店内も何だか薄暗い。「しまった臨時休業か」と思ったがドアの横には営業中の小さな看板が掲げられていた。ちゃんと営業していたのである。
店内が薄暗く見えたのは照明が半分くらいしか点いていないためであった。経費節減のためであろうが、やはり飲食店は明るい方が入りやすい。もちろん最初から暗めの照明でデザインされた店は別だが。
初老のご夫婦で営んでいるようだ。最初、厨房で調理を担当している男性は息子かな、と思ったがよく見るとパーマをかけた髪型のせいで後ろ姿が若く見えた主人なのであった。
いかにも昭和の中華食堂といった趣の店内は思いの外広い。カウンターが10席程度、4人がけのテーブルが二つの他に、細長い座敷があり座卓が5ヶ並んでいる。かつての観光地としての賑わいを物語る収容力だ。店内は少々乱雑であるが、不潔という程でもない。先客の若い男性客が1人、カウンターで黙々と何かを食べている。
メニューは豊富だし、観光地としては全般的に安めなのが嬉しい。「餃子セット」を「ラーメン普通サイズ」にして注文。
7〜8分で餃子セットラーメン通常サイズが到着。ちなみに通常の餃子セット¥650にラーメンのサイズアップでプラス¥200であった。
極めてトラディショナルかつ正統派のビジュアルのラーメンだが、具が5種類と充実している。うずら卵のトッピングは珍しい。
麺は細めのストレート麺。硬めの茹で上げで噛むと若干の弾力の後にプツッと切れる。
スープは鶏ガラの、特に何かが際立ったところもないごくごく普通のスープである。厚めのロースチャーシューが柔らかくて美味い。それとメンマがかなり太っ腹な量入っている。
ほうれん草のトッピングが嬉しい。僕はラーメンには海苔やワカメよりもほうれん草が好きだ。あまり出会うことはないのだが。
小ぶりにカリッと焼かれた手作り餃子はちょっと生姜を効かせた餡が美味い。それと、ご飯が美味い。もうすぐ新米の時期だというのにツヤと甘味のある米だ。
ラーメンも餃子も、言ってみれば特別なことはないごくごく普通の味だ。だけど僕はこういうのが好きだ。家族で神社に参拝して、ちょっと疲れたところでみんなでやれやれという感じでこの店に来て、普通のラーメンを食べて帰る。
もしもこの店が二郎系であったとしたら、そのような使い方には相応しくないだろう。
僕の後に3組ほどの客が入ってきて、店内は徐々に賑やかになってきた。
武水分神社のかつての賑わいを伝える店として、これからも地元の人や観光客に愛されることだろう。また参拝ついでに、今度はもやしとろみそばを食べに来たい。