昭和軒で「ソースカツ丼」
秋晴れ。紅葉真っ盛り。午前中ジョギングを終えて、大好きな仁科三湖方面へドライブ。本当は木崎湖でジョギングしたかったのだが、夏にクマが出てキャンプ客が襲われて以来、お預けとなっている。走るには最高の場所なのだが、再び安心して走れる日が来るだろうか。せめて昼飯は大町で食べよう。
大町駅前からは町の規模とはアンバランスな、とても長いアーケードが伸びている。その距離1kmくらいはあるだろうか。例によって半分以上はシャッターが下ろされたままとなっている。かつてはこの駅を拠点とする、黒部アルペンルート観光に訪れる人々で賑わったのであろう。現在は新しく出来たバイパス沿いに量販店が立ち並び、地元の人で賑わっている。
そんな寂れたアーケードの中に、客が並ぶ繁盛店がある。
それがここ「昭和軒」である。
老舗の鰻屋さながらの昭和初期から注ぎ足されたソース。これはソースカツ丼を頂かなくてはなるまい。
店の前には二人連れの先客が並んでいる。特に名前を書いて順番待ちをするシステムではなく、到着順に外で待つらしい。二人連れは途中で業を煮やして途中で帰ってしまった。直後、すぐに席が空き、愛想の良い女将さんに「どうぞ」と案内される。二人連れに申し訳ない思いで4人がけの座卓に一人で座る。
歴史を感じる重厚な店内。ウィルス対策がかなり入念だ。
やはり、この地域はカツ重・カツ丼といえば「ソースカツ」がデフォルトである。迷わずソースカツ丼(¥850)をオーダー。
10分程でソースカツ丼が到着。白馬の「おおしも」と同様、色鮮やかなサラダが添えられているのが嬉しい。
カツの存在感が半端ない。
豚ロース肉はしっかりした厚みがあり、脂身もほどよく残されている。僕は脂身大好きなのでこれは嬉しい。
ソースは甘さ控えめでスパイスがしっかり効いており、とんかつの脂っこさをほどよく調和してくれる。既にちょうど良い量のソースがご飯とカツにまぶされているが、テーブルにソースが備え付けられており濃い目が好きな人は更にかけることができるのが嬉しい。
ソースを程よく含みながらもサクッとした食感を残した衣、脂身の旨味、キャベツのシャキシャキ、ご飯の甘さが口の中で渾然一体となる。慣れてくるとカツ丼はソースカツ丼の方があっさりと食べられる。
味噌汁は野菜がたっぷり入った具沢山、テーブル備え付けのドレッシングは3種類あり、赤いドレッシングはちょっとニンニクが効いていて美味しかった。
愛想の良い女将さんはこまめにテーブルを回ってお茶を注ぎ足してくれる。
お会計した後、おかみさんは「ありがとうございました」と深々と頭を下げた。
いやソースカツ丼一杯でそんなに頭を下げられてもと恐縮してしまう。老舗であることに胡座をかかず、謙虚に商売を続けることがこの寂れたアーケードにあっても息の長い人気の秘訣なのであろう。とても良い気分で店を後にした。