美郷で「大ざるそば」
長野市中心部から西方へ車を走らせること小一時間、大町市美麻(みあさ)・新行地区にやって来た。絵に描いたような信州の里山風景である。
峠を抜けた小さな集落には蕎麦畑が広がり、民宿や蕎麦屋が数軒立ち並ぶ。
今日お邪魔したのは中でも繁盛店のここ、
「美郷」である。日曜日の12時ちょうどに到着したが、すでに数組の客が待っている。
店先には賢そうな犬が。
「モンキー・ドッグ」といって野生の猿から農作物を守る大事な仕事を請け負っているのだとか。とても人懐こい。
約20分後、店内に呼ばれる。席に着くとすぐにゼンマイの漬物と湯飲みが。
ポットのお茶はセルフサービスなのだが、これが甘くて香ばしくて実に美味いのである。結局退店まで5杯くらい飲んだ。
10分ほどで蕎麦が到着。大きな葉っぱの天ぷらが載っている。「オカノリ」の天ぷらなのだそう。
瑞々しい蕎麦は乱切りで、柔らかい部分と歯応えのある部分とのコントラストが楽しい。乱切り蕎麦とは決して均等に切り揃える技術がないのではない。きれいに切り揃えられた蕎麦は確かに上品な口当たりとなるが、乱切りそばには素朴で力強い魅力がある。ちなみに僕は乱切りの方が好きだ。
つゆがいい。甘さ控えめのキリッとしたつゆである。
添えられたオカノリの天ぷらが嬉しい。ちょっと滑りがある舌触りである。
蕎麦を堪能している途中で、蕎麦湯と蕎麦焼が運ばれて来た。
一見コースターのような蕎麦焼。煎餅のように硬いのではなくしっとり柔らかい。蕎麦クレープのような印象であった。
周りの里山の美しさと相待って、心が洗われるような美味しい蕎麦であった。都会から来たお客さんを連れて行ったら喜ぶだろうな。